AI-Native SAFe Session 2: 「アウトプット」から「アウトカム」へ

2026-07-07 By Andrew Sales

AI時代のオペレーティングモデルとして「AI-Native SAFe」を発表した6月16日の初回発表に続き、私たちはこの進化のプロセスをコミュニティの皆さまと共に歩んでいくことをお約束しました。そして6月30日、オンラインイベントシリーズの第2回となる 『AI-Native SAFe: 「アウトプット」から「アウトカム」への転換』を開催し、次なる一歩を踏み出しました。

第1回のセッションでは「AI-Nativeなオペレーティングモデル」が戦略的に必要とされる理由に焦点を当てましたが、第2回では一歩踏み込み「実行(エグゼキューション)」へとフォーカスを移しました。AIが支援する世界において、デリバリー(提供スピード)はもはや最大のボトルネックではありません。AIツールや自律型エージェントの登場により、かつてないスピードでコードを構築、リリースできるようになり、ボトルネックの所在そのものが変わったのです。
今や真の課題は、「私たちが構築しているものが、本当に価値があり、安全で、戦略的意図に沿っているか」を確実にすることにあります。要するに、組織は「アウトプットの管理」から「アウトカムの管理」へと大きく舵を切る必要があるのです。

この目標をサポートするため、私たちは「AI-Native SAFe」ガイダンスの最新アップデート(下図の円で囲まれた箇所)を公開いたしました。これは「AI-Native SAFe Big Picture」から直接アクセスしていただけます。

AI-Native SAFe Big Picture

第2回のセッションで取り上げた主要テーマの概要を、以下にまとめました。

今回の「SAFe」最新バージョンの開発は、非常に深いコラボレーションによる取り組みでした。画期的な著書『From Project to Product』で多くの皆様によく知られているMik Kersten氏と、このセッションでご一緒できたことは大変幸運なことでした。Mik氏は今年7月、新著『Output to Outcome』を出版予定です。

この本の前提は極めてシンプルです。「AIがアウトプットを無限に増幅できる世界において、組織は間違ったものを最適化してしまうリスクを抱えている」ということです。
著書の中でMik氏は、自律型AIソフトウェアエンジニア「Devin」の開発元であるCognition社の事例を取り上げています。同社のチームは、毎週複数の新しいエージェントや新機能を開発しています。そして週次のリーダーシップアライメントミーティングにおいて、これらの取り組みをレビューするのです。もしある「アウトプット」が目指すべき「アウトカム」に沿っていれば採用され、それ以外はすべて破棄されます。これこそが、AI時代における「あるべき姿」です。人間やチームを確実にプロセスの中心に据えながら、かつてないペースでイノベーションを推進しているのです。

アジャイルの黎明期においては、「動作するソフトウェア」が進捗の主要な尺度でした。しかし、AIによって成果物の作成コストが劇的に低下した現在、単に機能をリリースするだけでは差別化要因になり得ません。それは単なる「アウトプット」に過ぎないからです。解決策は、アウトプット自体を直接管理することではありません。私たちは「アウトカム」を管理し、増大したアウトプットから価値を引き出す必要があります。
このパラダイムシフトをサポートするため、私たちは独立した新たなガイダンス記事「AI-Native SAFeにおけるアウトカム主導のプロダクト開発」を公開いたしました。
このガイダンスの中心となるのが、下図に示すサイクルです。このサイクルは、チーム、ART(アジャイルリリーストレイン)、ポートフォリオというフレームワークのあらゆるレベルに適用されます。その中核となるミッションは、迅速なフィードバックループを生み出しながら、「目指すべきアウトカム」から「実現された価値」へのフローを加速させることです。

AI-Native SAFeにおけるアウトカム主導のプロダクト開発サイクル

  1. アウトカム(Outcomes):OKRとして表現され、ポートフォリオにおける企業戦略への貢献から、チームが次のPIで達成を目指す意図に至るまで、多岐にわたります。
  2. 優先順位(Priorities):ポートフォリオではアウトカムに資金を配分することで優先順位を決定し、ARTやチームではそれらのアウトカムを達成する仕事にキャパシティを割り振ることで優先順位を設定します。
  3. アウトプット(Outputs):ポートフォリオにおけるアウトプットはプロダクトやソリューションであり、ARTやチームにおいてはフィーチャー、プロトタイプ、イネーブラー、エクスペリメントを指します。
  4. 計測(Measurements):継続的なモニタリングを通じて、成果に繋がる有望なアウトプットを見極め、それ以外のすべての仕事については思い切って方向転換するか、中止します。
  5. 価値(Value):AI-Native SAFe における価値とは、顧客が達成したアウトカムと、それがもたらすビジネス上の成果を意味します。

従来のポートフォリオ戦略の策定は年単位で行われ、策定までに6〜9か月を要することも珍しくありませんでした。しかしAI時代において、そのような計画サイクルで策定された戦略は、実行に移される頃にはすでに時代遅れになってしまいます。 AI-Native SAFeでは、ポートフォリオの投資戦略を新たなアプローチへと転換します。複数の小規模な投資を打ち出し、早期の失敗を許容しながら、四半期ごとにリソースを動的に再配分していくのです。

さらに、AI-Nativeなソリューションは、「ITコストは固定的である」という従来の前提を覆します。今日の予算は、トークン消費量という経済的要因に左右され、極めて変動しやすくなっています。 コンテキスト量の多いプロンプトやシステム指示、自動化された処理ループは、従来の予算想定を遥かに超えるスピードでコストを膨らませる可能性があります。
そのため、ポートフォリオのリーダーは、トークン使用量に対する運用コストのガードレール(制限・管理基準)を設定し、固定費と変動費を明確に分離したうえで、消費状況を絶えずモニタリングしなければなりません。

ARTレベルにおいて、アウトカムはもはや計画の事後的な要約ではなく、計画立案の対話を促進するための積極的なインプットなのです。 これにより、複数のART間での整合性が確保され、チームにコンテキストが共有されるとともに、私たちが新たに実施する「Sense and Respond」イベントのベースラインとして機能します。

新しいアウトカム駆動のロードマップは、組織が単なるアウトプットの計画作成から脱却し、本来の意図、マイルストーン、リリース、そして段階的に実現される主要な成果を視覚化できるように支援します。

重要なのは、このロードマップが以下の要素を備えた効果的なプロダクトビジョンによって支えられている点です。

  • データに基づく(Informed by Data):AIによるセンチメント分析や機械学習を活用し、膨大な市場や顧客のインサイトをリアルタイムで統合、分析します。
  • 戦略との整合(Aligned to Strategy):ポートフォリオのアウトカムや厳格な財務ガードレールに準拠します。
  • 技術的裏付け(Anchored to Technology):強固なアーキテクチャの関与により、実用的かつ技術的に実現可能なものとします。

では、AIのハルシネーション(誤情報の生成)を防ぎながら、ハイレベルなアウトカムをどのようにして確実な実行へとつなげればよいのでしょうか?
AIが信頼できるパートナーとして機能するためには、インテント(Why)、仕様(What/How)、コンテキスト(Where)という3つの柱が必要です。これらの要素が統合された情報基盤として連携していれば、人間がAIエージェントにゼロから説明する必要はありません。エージェントは、自らの業務に必要なコンテキスト、ポリシー、目標を周囲のエコシステムから直接、安全に抽出できるのです。

このような環境において欠かせないのがキュレーテッドデータです。それは、完全で正確、適切に管理され、安全にアクセスできるデータを意味します。アーキテクチャランウェイの上にニーズに先駆けて意図的に構築されたこのキュレーテッドデータこそが、アウトカム駆動型サイクルのすべてのプロセスの原動力となります。

Session 2のライブ配信をご視聴いただけなかった方は、ぜひ以下よりアーカイブ動画をご覧ください。
単なるアウトプットの量の追求から脱却し、真のビジネスインパクトをもたらすアウトカムへと組織を移行させる方法をご確認いただけます。

次回セッション「AI-Native SAFeチームおよびARTの立ち上げ」にぜひご参加ください。参加枠を確保し、ライブQ&Aに参加するには、お申し込みページからご登録をお願いします。

*本シリーズのライブ配信はすべて終了しておりますが、全セッションの日本語字幕付き動画は、
AI-Native SAFeシリーズ ウェビナー録画配信 (日本語字幕付き)よりご視聴いただけます。

本バーチャルイベントシリーズは12週間にわたって開催され、9月14日〜18日に開催される「SAFe Summit San Diego」にて、その全容が公開されます。

皆様とともにこの旅に出発し、一緒に未来を築いていけることを心から楽しみにしています。

Stay SAFe,

Andrew Sales, SAFe Chief Methodologist


ブログシリーズ:AI-Native SAFe ウェビナー

Session 1 : AIネイティブ組織のためのオペレーティングモデルとしてのAI-Native SAFe

Session 2 : AI-Native SAFeによる「アウトプット」から「アウトカム」への転換