SAFeの再構築:成果の最大化とビジネスバリューの実現
2025-01-14 By Andrew Sales
新しいSAFeビッグピクチャーにおける重要なストーリーラインを紹介するシリーズ第4弾、そして最終回となるブログへようこそ。これまでのブログでは、リーンポートフォリオマネジメントによる戦略アジリティの実現、顧客中心の革新的なプロダクト開発、そして顧客への価値のフローの加速について取り上げてきました。そして今回は、第4のストーリーライン「成果の最大化とビジネスバリューの実現」に焦点を当てます。これら4つのストーリーラインは、プレゼンテーションと動画ページからダウンロード可能なプレゼンテーションとしてご覧いただけます。
日々の意思決定にビジネスバリューを組み込むことは、長期的な成功にとって不可欠です。
SAFeの随所に、ビジネスバリューの具体的な表現が見られます。たとえば、エピックにおける成功基準、フィーチャーに対するビジネス上のベネフィット、PIオブジェクティブに対するビジネスバリュースコアなどがその例です。
ポートフォリオ全体およびARTにおけるあらゆる仕事は、ビジネスバリューの観点から継続的に優先順位がつけられ、ARTが常に最も価値の高いフィーチャーに取り組めるようにしています。
図1. SAFeを活用した顧客への価値のフローの加速
新たなビジネスバリューに関するガイダンス記事
しかし実際には、多くの組織でビジネスバリューへのフォーカスが失われがちです。チームは日々の業務に追われ、プロセスや技術、あるいは個別のKPIに注意を向けるあまり、より広い価値目標との整合が取れなくなることがあります。このような乖離は、組織内のズレや労力の浪費、そして成果を上げられない取り組みにつながるおそれがあります。
多くの組織では、「ビジネスバリュー」は、戦略的な目標設定に結びついた経営層の責任であると考えられているのが一般的です。しかし、実際には分散型の意思決定こそがアジャイルな組織運営の鍵であり、チームの創造的な力を解き放つために必要不可欠です。そのためには、あらゆるレベルで明確かつ状況に即したビジネスバリューの理解が必要であり、それが意思決定を導く指針となるのです。
もちろん、「ビジネスバリュー」という概念が万能ではなく、それが極めて状況依存であるという課題があります。ある組織にとって価値のあるものが、別の組織ではそれほど重要でないこともあります。同じ組織内であっても、ポートフォリオ、アジャイルリリーストレイン(ART)、あるいはチームごとに、それぞれの業務の状況において、何が価値とされるかの解釈は大きく異なる場合があります。今回の新たな「ビジネスバリュー」に関する記事は、まさにこの課題に取り組んでいます。
ビジネスバリュー探索の4つのステップ
ビジネスバリューの探索は、組織のあらゆるレベルにおいて欠かせない取り組みであり、新たな「ビジネスバリュー」に関する記事では、このプロセスの基盤となる4つのステップについて順を追って説明しています。

図2:ビジネスバリュー探索の4つのステップ
- 価値あるものを特定し、明確に説明する
ビジネスバリューの特定は、SAFeにおけるあらゆるイベントや活動を通じて行われ、組織のあらゆるレベルで実施されます。ポートフォリオレベルでは、ポートフォリオのステークホルダーやエピックオーナーが、ポートフォリオ・カンバンを通じてこの議論を開始します。多くの場合、この議論はポートフォリオ戦略の洗練プロセスよりも早い段階から始まります。ARTレベルでは、チームがソリューションを評価し、利用シナリオを検討し、顧客中心の手法を適用する中で、ビジネスバリューの特定が進められていきます。
- ビジネスバリューの側面を探る
ビジネスバリューをより深く探求し理解するには、表面的な表現にとどまらず、その価値がどのように実現されるのかに焦点を当てることが重要です。それは収益のような有形の価値でしょうか。それとも、ブランド・アイデンティティのような無形の価値でしょうか?コスト削減を重視する内部向けの価値でしょうか。それとも、成長を重視する外部向けの価値でしょうか?こうした重要な問いかけを通じて、ビジネスバリューに対するより繊細で深い理解が得られます。
- ビジネスバリューに関する現時点での理解における不明点を特定する
ビジネスバリューに関するあらゆる主張は、それを裏付ける明確な証拠がない限り、仮説にすぎないと考えるのが一般的なガイドラインです。このことは、効果的なフィードバックシステムの構築が重要であることを強調しています。ビジネスに関連する「未知の要素」を分類することで、それらを効果的に管理するための適切な対応策を判断するのに役立ちます。
- ビジネスバリューをどのように測定するかを定義する
ビジネスバリューをどのように測定するかを理解することは、価値の探索プロセスにおいて不可欠です。これにより、合意されたアプローチが、私たちが価値あるものとして定義した内容と整合していることが保証されます。成果に関する実証データを取得するために必要なインフラや手法を整備することが不可欠です。
ビジネスバリューの探索は、組織のあらゆるレベルにおいて欠かせない取り組みです。
「ビジネスバリュー」に関する記事で紹介されている4つのステップは、何が価値のあるものなのかをより深く理解し、組織内の整合性を生み出し、意思決定や優先順位付けを支援し、さらにその価値をフィーチャーやエピック、戦略テーマ、その他の手段を通じて表現する力を高めます。
このガイダンスが、皆様の組織において有益なものであれば幸いです。
— Andrew Sales and the Framework Team
ブログシリーズ:SAFeの再構築