Vantiv – SAFe®を活用したリーンアジャイル変革

SAFeを活用してリーンアジャイルの取り組みを開始して以来、Vantivは戦略的な取り組みと実行の両面に注力してきました。その結果、製品提供の予測可能性が向上し、高い品質を維持しながら、顧客への対応力も一層高まりました。これにより、顧客満足度が向上しました。さらに重要な点として、従業員のエンゲージメントもこの1年で高まりました。
—Dave Kent, Enterprise Agile Coach, Vantiv
課題:
より持続可能で長期的なインパクトを持つソリューションを提供し、かつ競争の激しい業界で先行し続けるために迅速に実行する。
業界:
情報技術、金融サービス
ソリューション:
SAFe® v4.0
成果:
- 2015年、Vantivは従業員数を9%削減しながらも、フィーチャーおよびケイパビリティを7%多く提供。
- 社内の依頼元からの要望に対して、チームは納期通り、あるいはそれより早く成果を提供し、財務面において大きなプラスの影響をもたらした。
- チームは、80%から100%の確率でコミットメントを達成。
- 年々、ソリューションへの変更回数は倍増しているが、顧客から報告される品質インシデントの件数は増加していない。
ベストプラクティス:
- 四半期ごとのビジネスレビュー — 製品チームとビジネス部門が足並みをそろえるための協働的なミーティングを実施。
- 経験ある支援の活用 — アジャイルコーチがこれまでの取り組みとは一線を画す実践的な経験と具体例を提供。
実現を支えたパートナー

概要
決済処理のリーディングカンパニーであるVantiv Inc.は、米国最大手の小売業者から地域のコーヒーショップに至るまで、年間250億ドルを超える金融取引を支えています。
同社は、ソフトウェア企業やテクノロジーサービス企業と提携し、決済処理機能をフロントおよびバックオフィスのアプリケーションに組み込むことで、よりスマートで迅速、かつシンプルな決済を実現しています。
Vantivのコマーステクノロジーは、幅広いPOSシステムと連携しており、数千のPOSソフトウェア開発者や付加価値再販業者(VAR)から成る広範なパートナーネットワークを通じて、加盟店にサービスを提供しています。

同社はまた、あらゆる規模の加盟店および金融機関に対して、従来型および革新的な決済処理及びテクノロジーソリューションの包括的な製品群を提供しており、これにより顧客は単一のプロバイダーを通じて自社の決済ニーズに対応することが可能になります。
Vantivは、顧客への高い対応力を誇り、多くのソリューションを個々の組織向けに特化して開発しています。
一方で、従来から定評のある企業向けサービスを維持しつつ、より幅広い顧客層のニーズに応えるために、長期的な視点を持ったソリューション開発にも取り組んでいます。その目的は、より持続可能で長期的なインパクトを持つソリューションを、迅速に提供することで、競争の激しい業界において常に一歩先を行くことにあります。
SAFe:一貫性と継続的な改善のために
2015年、Vantivは「True North」と呼ばれる共通の枠組みのもとで、複数のビジネス変革イニシアチブを開始しました。「True North」は、透明性・方向性・継続的な改善を重視する文化を築くとともに、製品・IT・マーケティング・戦略における卓越性を実現するために、企業の仕組みを再構築することを目的としています。
客観的な視点を得るため、Vantivはプロダクトマネジメントおよびプロダクト開発分野で高い評価を受けている有識者を招きました。このコンサルタントは、主に2つの重要な提言を行いました。1つ目は、プロダクト主導の戦略に基づき、より包括的な視点を持つこと。2つ目は、全社的にリーンアジャイル型のプロダクト開発アプローチを採用することです。当時、IT部門の一部ではScrumが導入されていました。
これら2つの目標を達成するために、Vantivは全社的なリーンアジャイル変革を開始しました。しかし、人材やチームへの十分なフォーカスがなされておらず、アジャイルに対する理解も浅かったため、その勢いは阻まれてしまいました。そこでVantivは、Lean-Agileの実践に必要な構造と方法論を得るために、Scaled Agile Framework®(SAFe®)とともに、Scaled AgileのゴールドパートナーであるCA TechnologiesおよびIcon Technology Consultingに支援を求めました。
「アジャイルを成功させるためには、チームレベルでのより一貫した取り組みと、提供プロセスの整合性が必要だと気づきました」と、トランスフォーメーション担当プログラムディレクターのHenry Noble氏は語ります。「それを実現するための理想的なフレームワークが、SAFeでした。」
1000人以上のSAFeユーザー
Vantivはパートナーの支援を受けながら、社内各拠点で「アジャイル啓発」ロードショーを開催しました。
この取り組みでは、社員からの質問に答えるとともに、過去のアジャイルの取り組みについて自由に語り合うことを促しました。
次に、Vantivの従業員は、リーンアジャイルのプラクティスやツールの導入を目的とした2週間のフォーメーションプログラムに参加しました。専任のコーチが毎日グループを指導し、その後このグループは7つのチームに編成されました。彼らは2週間単位のスプリントでの作業を開始しましたが、新しい働き方を完全に受け入れる準備が整うまでは、アジャイルリリーストレイン(ART)の立ち上げを見送ることにしました。
当初は戸惑いはあったものの、チームはすぐにこの新しいアプローチを受け入れるようになりました。「開発者たちが最も誤解していたのは、アジャイルといえば“柔軟”だという点です」と、Noble氏は語ります。「しかし彼らはすぐに、アジャイルで成功するためには、相当な構造化が必要であることを学びました。」
チームはすぐにより主体的に関与するようになり、6〜8週間後にはアジャイルリリーストレイン(ART)の編成が可能なレベルまで成熟しました。2015年6月に開催された最初のPIプランニングミーティングには、150名が参加しました。
「新たに編成された各ARTにおいて、最初のPIイベントでは『準備が整っていない』と感じるのが一般的なパターンです。しかし、イベントが終わると参加者全員が『これまでで最高のプランニングミーティングのひとつだった』と言うのです」とNoble氏は語ります。
その後、Vantivのアジャイル成熟度は加速し、複数のチームで構成される複数のアジャイルリリーストレイン(ART)が立ち上がり、企業全体でSAFeフレームワークが活用されるようになりました。

協働的な四半期レビュー
この変革の一環として、ビジネス目標とプロダクト開発の整合性を高めることが求められました。
「四半期ごとのビジネスレビューは、透明性とフィードバックを高める絶好の機会であり、組織全体がどのように連携し、顧客のニーズに対応するために調整しているかを示す場でもありました」と、VantivのエンタープライズアジャイルコーチであるDave Kent氏は語ります。「すべてのステークホルダーがこの戦略的な計画に参加することで、プロダクトのリーダーシップが強化されるだけでなく、プロダクト戦略とIT戦略の整合が、いかに大きな力を発揮するかを示すものでもあります。」
あらゆる分野での成果
SAFeの導入から18か月後、同社では以下のような改善が確認されています。
生産性
2015年、Vantivは人員を9%削減しながらも、提供するフィーチャーとケイパビリティを7%増加させました。
「私たちは、変革の最中でありながら、より少ない人員でより多くのケイパビリティを提供できていると自信を持って言えます」と、Noble氏は語ります。「無駄を排除し、コア機能に集中することで、少ないリソースでより多くのことを実現しているのです。」
市場投入までの時間
Vantivは、製品の提供に一層注力するという目標を達成し、市場の需要に先んじて革新的なソリューションを生み出すことに成功しました。
予測可能性
ARTレベルでは、チームは段階的な提供に注力し、ステークホルダーのフィードバックに耳を傾けることで、80〜100%の割合でコミットメントを達成しました。
「市場の先頭に立ち続けるために、私たちは対応力と予測可能性に注力しました。その結果、顧客に対しては確固たるコミットメントを 組織全体には透明性を提供することができました。」と、Vantivのトランスフォーメーション担当プログラムディレクターであるHenry Noble氏は語ります。
品質
年々、ソリューションへの変更回数は倍増していますが、顧客から報告される品質インシデントの件数は増加していません。「当社の品質は着実に向上しており、現在では最も小さな構成要素の段階から品質が組み込まれるようになっています」と、Kent氏は語ります。
従業員エンゲージメントと定着率
透明性が高まることで、信頼と従業員エンゲージメントも向上し、真のカルチャー変革が実現しました。
その結果、過去2年間で離職率が低下し、Vantivはシンシナティにおける「最も働きたい会社(Best Place to Work)」に選ばれました。
「SAFeは整合性と透明性を提供してくれます」と、Kent氏は語ります。「個々のメンバーが、自分の役割が全体の中でどう位置づけられているのか、そして自分の仕事が会社の目標とどう結びついているのかを、真に理解できるようになるのです。」